大判例

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高松高等裁判所 昭和31年(う)55号 判決

所論は被告人等は取り出した投票用紙を特定候補者の選挙を有利ならしめるため使用したものであるから、かかる場合はいわゆる不正領得の意思に出たものではないと主張し、又は取り出した投票用紙は之に候補者の姓又は名を記入する目的であつたのであるから不法領得の意思は存しないと主張する。原判決挙示の証拠によれば被告人は取り出した投票用紙に候補者の氏名を記入し之を投票箱に投じ正規の投票のごとく取扱つて該候補者の当選を図つたことが認められる。しかして窃盗罪に必要とされる不正領得の意思とは権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従い之を利用又は処分する意思の謂であることは所論判例の示すところであるが投票用紙を前記のように利用することも亦所有者と同様の実を挙げるものでいわゆる不正領得の意思ありと解するを妨ない。所論のようにその結果特定候補者の当選を図る目的の存したことはもとより領得の意思の存否とは別個の問題である。掲記の昭和九年一二月二二日の大審院判決は事案を異にし本件を律するを得ない。所論は採用し得ない。

弁護人Aの原判示第一の事実に関する事実誤認の論旨について。

所論は原判示第一(一)の投票用紙は原審相被告人須本文武の保管に係るものであるから窃盗罪を構成しないと主張する。しかし公職選挙法施行令第五〇条第五三条に徴せばその保管は原判示のとおり選挙管理委員会委員長の手に存することは明らかである。ただ原審相被告人須本文武の検察官薬師神惣三郎に対する供述調書(昭和三〇年五月三一日付)によれば右須本は執務上常時二、三百枚の不在投票用紙を手許に備え必要に応じ投票者に交付し退庁に際しては小箱に納め施錠して選挙管理委員会室に保管していたことが認められる。しかし前記のごとき不在投票者に対する投票用紙の交付が選挙管理委員会委員長の職務とせられる前記法条の規定に照しても右須本の之らの取扱は何れもその係員として選挙管理委員会委員長の補助者として委員長の職務を補助していたものと解すべきであるから右投票用紙の占有は終始選挙管理委員長に存し従つて前記供述調書記載のごとく被告人が右須本をして原判示の日頃午後一一時頃右場所に保管中の投票用紙を取り出さしめたことは窃盗罪を構成すること論を俟たない。この点の論旨も理由がない。

(裁判長判事 三野盛一 判事 塩田宇三郎 判事 合田得太郎)

<以下省略>

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